ガソリン代は高くても良いのか?:トリガー条項から考える


本記事の解説対象は、
『地球温暖化対策、脱炭素社会を目指す観点から言えば「ガソリン代は高くていい」』
という話題についてです。

この意見に対する経済的な観点からの解説は以前実施しました。
https://jpp-trynews.com/%e3%82%ac%e3%82%bd%e3%83%aa%e3%83%b3%e4%bb%a3%e3%81%af%e3%80%81%e9%ab%98%e3%81%8f%e3%81%a6%e3%81%84%e3%81%84%ef%bc%9f%e3%80%80%ef%bc%9a%e7%b5%8c%e6%b8%88%e5%ad%a6%e7%9a%84%e8%a6%b3%e7%82%b9%e3%81%8b/

今回は、ガソリンの価格に影響がある「トリガー条項」について、解説いたします。

トリガー条項とは?

トリガー条項とは、「銃などの引き金」であるトリガー(trigger)に由来しており、一定の条件を満たした場合に発動する取り決めのことです。国同士が締結する自由貿易協定にも使われます。

今回取り上げるトリガー条項とは、ガソリン税のトリガー条項です。
これは、ガソリン価格が値上がりしたときに、一定以上の価格上昇を抑えるための一時的な減税措置になります。

ガソリン税は、本来の課税額に25.1円が上乗せされ、全体で53.8円となっています。 「トリガー条項」は、この上乗せ分について、
全国平均のガソリンの小売価格が1リットル当たり160円を3か月連続で超えた場合、自動的に減税、
あるいは、平均の小売価格が3か月連続で130円を下回った場合、上乗せ分の25.1円の課税が復活します。
また、地方税である「軽油引取税」にも同じような仕組みで「トリガー条項」が導入されています。

しかし現在、2011年の東日本大震災のあと、復興財源を確保する目的で「トリガー条項」を凍結しました。
これを凍結解除するかどうか様々な議論が続いていますが、いくつか論点が考えられます。

1.本来の課税額に対する「上乗せ」に対する是非

ガソリン税のトリガー条項において問われる最初の論点は、本来の課税額に対して上乗せされることです。
現在のガソリン税は、課税額に25.1円が上乗せされることで成り立っていますが、この上乗せ分はなぜ必要なの課という論点です。

2.復興のためにガソリン価格を下げないことの是非

トリガー条項を凍結したことにより、ガソリン価格が自動的に下がることがなくなりました。
これは、復興のためには必要な措置なのでしょうか?
復興期間中、ガソリン価格を下げないことにより、復興に必要な財源を確保するとされますが、
復興地もガソリンは必需品です。
またガソリン価格の上昇は、復興地を含めた全国民の家計に負担をかけることになります。

3.価格高止まりを避けるという制度趣旨への評価

ガソリン税のトリガー条項は、価格高止まりを避けるための制度です。
ガソリン価格が急騰した場合に、一定の価格上昇を抑えるための減税措置が自動的に行われます。
つまり、ガソリン価格が高止まりすることは「良くない」という考えから作られた制度と言えます。

以上が、ガソリン税のトリガー条項について考えられる論点です。
凍結されているとはいえ、制度がなくなったわけではないトリガー条項。

ガソリン価格と復興財源の両面を考慮し、より良い政策を検討していく必要があります。